無意識とは何か?
言葉の起源をさかのぼると、精神科医のS・フロイト(1856-1939)が「無意識」の存在を仮定して精神療法の発展に寄与してきたことが有名ですが、
今日一般では、無意識という言葉を誰もが当たり前に使っています。
無意識は、私たちの意識外の脳の働きであると言えます。
考えることや、意識的に行動することの全てが脳の働きであるならば、
私たちが考えずに行っていることの全てもまた脳の働きです。
例えば、心臓は私たちが意識せずとも日々動いています。自転車への乗り方も一度体が覚えてしまえば意識することなく運転することが出来ます。
体の運動に限ったことではありません。心もまた、私たちが知らない所で働いています。
そして、その見えない部分での心の働き、つまり無意識のありようによって、心や体の病気になり得るということを言っている人たちがいます。
今日でも、検査などをして内科的な異常が見当たらないのにも関わらず、体の不調をうったえる人がいますが、これも無意識の心の状態が身体化したものであると考えられます。
体のある一部分(例えば、お腹が痛い、胃が痛い)に不調を感じるからといって、必ずしもその一部分に異常や原因があるとは限らないのです。
E・クーエの自己暗示理論

①ある考えが精神を独占してしまった場合、その考えは実際に、肉体的もしくは精神的状態となってあらわれる。
②ある考えを意志の力でおさえようと努力すれば、その考えをますます強めてしまうだけである。
C・H・ブルックス、E・クーエ(著)、河野徹(訳) 『自己暗示〈新装版〉』 2010、法政大学出版局
ある考えが精神を独占してしまった場合とは、つまり物事を「強く思い込んでいる状態」を指すと思われます。
「私には出来ない」
「絶対に上手くいかない」
「私はどこに行っても針のむしろだ」
「私は人に好かれる人間ではない」 等々・・・
思い込むことによって、実際にその通りに「出来ない」「上手くいかない」ことがあるようです。
また、本当に上手くいかなかったりすると、思い込みは更に強化されます(つまり、思い込みの内容が真実だったと、思い込みの根拠が出来てしまいます)。
強化された思い込みは、「出来ない」「上手くいかない」といった信念を更に強めて、より思い込み通りの結果を呼び込むかもしれません。また、強い思い込みは口癖のように、自分の思考回路の一部として染みついていきます。
そこで人は、上記引用の②にあるように、
意志の力によって考えを押さえ込もうとするでしょう。
しかし、ある考えを否定したり、押さえ込むということは、同時に、
その考えが存在することを証明することになってしまいます。
存在しなければ、否定も押さえ込みも必要がないからです。
人は思い込みからそう簡単には抜け出すことができないようですが、
E・クーエは毎日以下のような暗示を反復朗誦するように患者に言いました。
「日々に、あらゆる面で、私はますますよくなってゆきます」
C・H・ブルックス、E・クーエ(著)、河野徹(訳) 『自己暗示〈新装版〉』 2010、法政大学出版局
(Day by day,in every way I’m getting better and better)
クーエによると、患者を健康にする道具はすでに患者の中にあるようです。
今日のカウンセリング場面において
今日の日本の臨床心理士・公認心理師は、
上述のクーエのやってきたような誘導自己暗示を使ってカウンセリングをすることはほとんどないと思われます。私自身も暗示を使ったカウンセリングを行うことはありません(また、それを十分に使いこなすことが出来るほどの技術も持っていません)。
しかし、意図せずして、カウンセリングの中でクーエの主張するような無意識の力、暗示の効果が現れることは大いにあります。

カウンセリングでは、多くの場合、出会って間もないクライアントとの関係作りから始めます。
少し専門的な用語を使うと、これを「ラポールの形成」と言ったりします。ラポールとは信頼関係のことです。
ラポールがなければ、目の前の相手に自由に話をすることが出来ません。どこか不信感を持ったままでは、気持ちのカタルシスも得られません。
このラポールの存在自体がある種の暗示でもあります。つまり、信頼している相手の言うことであれば、ある程度は受け入れやすいし、「その通りかも」と感じやすくもなります。
カウンセラーが何気なく言った一言、仕草、表情、反応の一つ一つが、クライアントに色々な影響を与えることになります。
クライアントはカウンセラーをよく見ており、カウンセラーの反応に一喜一憂もします。
自分の言ったこと・行ったことが良いことだったのか悪い事だったのか、クライアントはカウンセラーを観察して、自分の考えをより強固なものにしたり、あるいは考え直したりします。
同様の過程がカウンセラーの側にも起こり得ます。カウンセラーもまた、クライアントの様子をよく見ていて、カウンセラーとしての自分の発言がどのように捉えられたのか、良かったか悪かったか、クライアントの観察を通して学習されていきます。
カウンセラーの何気ない発言が、意図せずしてクライアントの一大決心につながることもあります。また、意図せずして、クライアントの悩みの解消につながることもあります。
「この人が言うのならそうなのかもしれない」と、思うこともあるかもしれません。
「見えないけど在るもの」と付き合っていく
無意識は目には見えない、存在を証明できない仮の概念です。
しかしそれが在ることは、夢や言い間違い、自分でコントロール出来ない気持ちや考え、行動などから推し量ることが出来ます。
人は常に、意識的に得たものを無意識的に情報処理して、自分でも気が付かないうちに様々なことを考えているものです。
人の性格が形成されていくことも、強い思い込みが出来上がっていくことも、私たちの意識の裏で、知らない内に行われていく過程です。

心も、命も、無意識も、魂も、、、
音も、空気も、感情も、、、
目には見えないからといって、無いということにはなりません。
この目には見えない何かを常に想像して、
目に見えている以上に、
目に見えていない部分で何が起こっているのかを推し量ることが、
カウンセリングで行われることです。
「見えないけど在るもの」
私たちは心の病気について考えていくときに、この「見えないけど在るもの」について否が応でも考えざるを得ません。
私は、無意識とは、「見えないけど在るもの」のすべての集合体のようでもあると思っています。
カウンセリングとは、
この「見えないけど在るもの」について考えていく過程であると言うことも出来るかもしれません。
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