HSPと発達障害の関連

コラム

HSPとは何か?

感受性が強く、敏感な性質を持った人のことを指します。

人口的には、5人に1人が該当するとのことです。

もう少し砕けた言い方をすると、私の理解では

一つの情報から普通以上に色々な事を連想したり、受け取ったりしてしまう性質を持つ人々

であると捉えています。

脳科学的な見地からは、ミラーニューロンの働きが強いと言えます。

ミラーニューロンは、他者の行動などを見て模倣し、自分に取り入れて学習する細胞です。

モノマネ細胞とも言われますが、模倣するためには、よく観察する必要があります。観察力が強すぎて、様々な憶測・深読みをしてしまい、日常生活上に様々な弊害が出てくるのがHSPということでしょう。

HSPという概念自体は比較的最近現れたものであり、まだまだ十分に認知されているとは言えません。

5人に1人というのも、日本人に関して当てはめた場合、正確な数字と言えるかどうかも怪しいものです。日本人は元々村社会であり、他者との協同をすることで生きてきたところがあります。協同のグループから外れたことをすると「村八分」にされてしまう文化です。そういった文化的背景もあり、広く捉えるならば、日本人は5人に1人以上はHSPに当てはまるのではないかと勘ぐってしまいます。

「比較的最近現れた」ということも、非常に意味深いことで、

対人関係を上手くやり抜かないと生き辛くなりやすい現代人が、それに過剰に適応し、進化した一つの形であるようにも思えます。

発達障害との類似

HSPを生まれつきの特性であるとするなら、

同じく生まれつきの特性の偏りである発達障害との類似点がいくつか挙げられます。

HSP発達障害
感覚過敏あるある(アスペルガー)
対人関係の苦手さ
(対人関係を避ける)
ある
原因:共感性の鋭さ。相手の気持ちを感じ取り過ぎて辛くなる
ある(アスペルガー)
原因:脳機能の偏り。他者とどう関わって良いか分からない。
こだわりある
原因:様々な刺激、相違点などによく気が付き過ぎるためにこだわりに発展しやすい。些細なことでも修正・訂正しなければ気が済まないなど
ある(アスペルガー)
原因:脳機能の偏り。興味関心の狭さ。○○マニア、○○博士とあだ名されやすい。
不注意ある
原因:感覚過敏、他者への配慮、考えすぎる等、他の事に注意を注ぎすぎて不注意になる
ある(ADHD)
原因:脳機能の偏り。他の刺激が無くても不注意になり得る。
多動性ある
原因:刺激、情報過多で落ち着かない、ソワソワする。
ある(ADHD)
原因:刺激、情報過多でなくても多動になる。
衝動性ない
(HSPの人は、共感性が高く、空気を読みすぎる。そのため、突発的な言動で相手を惑わさないように、細心の注意を払っていることが多い。衝動的になりにくい。)
ある(ADHD)
原因:脳機能の偏り。

・・・上記の表を見て頂ければ分かるように、確かにHSPと発達障害では共通の特性がいくつかあります。

しかし、背景に存在する原因が異なっているため、本質的にはやはり発達障害とは異なる概念であると考えられます。

HSPが情報を過度に受け取りすぎることから特性が浮き彫りになるのに対して、

発達障害ではしばしば情報を「うまく受け取ることが出来ない」OR「一度に処理できる情報の量が少ない
→ASDの「こだわり」の特性はこういったところから強調されると思います。

と言えるでしょう。

HSPの気質を持つ人は一人が好き??

「HSPの人は一人が好き?」

このように一般化することは危険ですが、そのような傾向はあると思います。

HSPの「敏感さ」とは、すなわち、
脳がわずかな刺激にもアラームを鳴らす状態である
ことを指しています。

このような性質、敏感さが過度に悪い方に働くと、

  • 被害妄想
  • 引きこもり(社会生活に支障が出るほどの重度の引きこもり)

などに発展する可能性が高くなります。

つまり、人の気持ちに気づき過ぎるがゆえに、殻にこもる必要が生じるのです。

私が見てきた、HSPの傾向の強い人の中には、

  • 職場の同僚や上司のずるがしこさに気づいてしまって、半ば無意識的に職場に嫌悪感を抱き、行きづらくなってしまった人
  • 学校における友人の気持ちを推し量り、人間関係に気を遣いすぎて、勉強以外の面で学校生活に疲れてしまった小~高校生の子ども

等が含まれます。

HSPの不思議な点

私がHSPに関して不思議に思っていることが一つあります。

それは、

HSPの人は、他人の気持ちに敏感である一方で、自分の気持ちには鈍感な人が少なくない

ということです。

これには様々な原因が考えられますが、まず一つは、

HSPの人は、他人の言動、態度、仕草に注意を払う能力が高く、むしろそこに一点集中しやすいため、その瞬間の自分の気持ちに目を向けることが疎かになりやすい

ということです。

また、HSPの人は敏感過ぎるがゆえに、しばしば他人の気持ちを深読みしすぎてしまうことがあります。深読みしすぎた結果、被害妄想に発展することも少なくありません。

つまり、自分を殺して他人を活かす方向に行きがちということも考えられるのです。

HSPの人が少しでも生きやすくなるための対策

ここでは、大きく分けて2つのポイントを押さえておきたいと思います

①外界からの刺激の入力を最低限に抑えるための工夫を考える

②あえて空気を読まない振る舞いをしてみる

以下に、これらの各ポイントについてもう少し説明していきたいと思います。

①外界からの刺激の入力を最低限に抑える

言うは易しですが、実際には難しいですよね。

例えば、ある飲食店でレジの仕事をしているAさんという女性がいるとします。

このAさん、お客さんのちょっとした振る舞いでも、

「何か機嫌が悪そうだ」
「私に怒っているかもしれない」
「私に怒っているわけじゃないとしても、怒らせないようにしなければ」

などと考え過ぎて、接客に集中出来ないことが多いそうです。

この単純な例では、Aさんはお客さんの

表情、身振り手振り、息づかい、しゃべり方、身体全体の動き、視線、、、など

様々な振る舞いから情報を受け取っています。

店員さんとしては正しいのですが、Aさんの場合は、一つの情報から二つ以上の情報を受け取ってしまいます。受け取る必要の無い情報もそこに含まれています。

ですから、なるべくお客さんを見ないようにする努力をする必要があると思うのです。

なるべくお客さんを見ないで、かつ、丁寧で安心する接客を考えること。これです。

目を見ないようにしましょう。しかし、全く見ないのも変です。視線が一瞬だけ合うように、挨拶などの言葉などを挟み、お辞儀をするなどしてうまくタイミングをずらしましょう。

相手をしっかりと見ないで済むように、深々とお辞儀をして、退店するお客さんをお見送りしましょう。

・・・

ところで今この記事を読んでいる皆さんは、

インド料理屋や中華料理屋でご飯を食べたことがあるでしょうか?

私はインド料理屋のナンが好きでよく行くのですが、

インド料理屋のインド人(ネパール人?)の接客態度は、お世辞にも良いとは言えません。

もちろん、これは日本人の目線において、です。

しかし、不快な気持ちにはなりません。彼らは、そういう文化の人たちなのだからという前提条件があるからです。

日本人の店員が悪い接客態度をしていると目立ちます。だから、極端に適当な接客をすることもおすすめしません。

丁寧かつ刺激入力を最低限にすることの出来る、自分の振る舞いを考えていきましょう

②あえて空気を読まない振る舞いをしてみる

これはHSPの人にとっては最も難しいことの一つかもしれません。

これが出来ていたら、そもそも悩んでいないと言う人もいるでしょう。

しかし、ここで強調したいのは、

空気を読まなくても穏やかな雰囲気を保つことが出来る場合もあることを知る必要がある

ということです。

相手の気持ちに敏感で、相手に合わせすぎて疲れてしまう人は特に、相手の気持ちを損ねること、相手が悲しむこと、相手が怒ること、、、等を恐れています

しかし実際には、そのような恐れていることが必ずしも起こるとは限りません

また、恐れているようなことが起こってしまったとしても、乗り切ることが出来るかもしれません

要するに、まだ起こっていない未来を過度に恐れる傾向も、HSPの人には含まれているのです。

ですから、普段はしないようなチャレンジ、つまり、あえて空気を読まない振る舞いをすることによって、自分の張り詰めた振る舞いのハードルを少しでも下げていくことをおすすめします。

もっとわがままになりましょう。

自分を甘やかすことも大いにしていきましょう。

他人を大切にすることと同様に、自分も大切にしましょう。

それこそが本当の平和的な人間関係だと私は思っています。

まとめ

いかがだったでしょうか?

HSPは5人に1人ということを信じるのならば、当てはまる人は多いと思います。

HSPに関する本は最近本屋でもよく見かけます。

HSPという言葉は、ラベルです。自分を説明するのにピッタリなラベルで、多くの人がこのラベルを使っています。それだけ、今の日本人にHSPの人が多いことを意味しているのだと思います。

HSPは敏感すぎて生活に支障が出ることもありますが、

良い部分、活かせる部分もあるはずです。

人の気持ちに敏感だからこそ、人に優しくすることも出来ます。

人里から離れ、自分一人の時間を持つ事が多い人は、自分の内面と向き合い、創造的な方面で才能を発揮する人も少なくありません

何事も良い部分と悪い部分を持っていますので、これも自分の特性の一つとして捉え、

より活かす方向に考えられるように、私もカウンセラーとしてお手伝いしていきたいと思います。

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引用・参考文献

高田明和(著) 『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』 廣済堂出版 2020年

高田明和(著) 『HSPとひきこもり 「自分を生きる」ためのひきこもり=「ソロ活」のすすめ』 廣済堂出版 2021年 

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