「自分の性格が嫌いだ」という悩みをもってカウンセリングに来られる方は少なくありません。
しかし、はっきりと「性格を変えたい」と言って来られる方はあまり多くないように思われます。
また、「変えたい」とまでは言わないまでも、「性格って変えられるんでしょうか?」くらいのおずおずとした雰囲気をもって来られる方はもう少し多いようです。
私自身もそうでしたが、「性格なんて変わりっこない」という強い思い込みが日本人の思考の癖として強く根付いているような気がします。
あるいは性格の大きな変革に成功した人をあまり見たことがないからかもしれません。
しかし、そもそも性格とは何なのか?
それによっては、性格は変えられるものとして捉えなおすことができるようになるかもしれません。
エゴグラムによる性格分析
エゴグラムという性格検査があります。比較的有名な心理検査で、心理士や医療従事者の中でこの検査を実施し、患者やクライアントの理解・支援のための一助としている人は多いことでしょう。
エゴグラムとは、すべての観察可能な行動(言語、音声、表情、ジェスチャー、姿勢、行動)を5つの自我状態(CP、NP、A、FC、AC)に分類し、それらの発生頻度を棒グラフにして示したものです。
心理カウンセリング場面においては主に、
・クライアントの性格を分析し、カウンセラー側のクライアント理解に役立てるため
・分析した結果(性格)をクライアントと共有し、クライアント自身の自己理解に役立てるため
などの目的で用いられます。

性格とは何か
性格とは人の行動パターンを分かりやすく言葉にまとめたものです。
性格が独自存在することはなく、すべて行動によって観察可能です。
例えば「優しい性格」と言う時、
ある人は・・・電車でお年寄りに席を譲るかもしれません
またある人は・・・いつもニコニコした顔で挨拶をしているかもしれません
またある人は・・・定期的に連絡をしてきて、体調の心配をしてくれるかもしれません
このように「~する」という行動をいくつも積み重ねてある人の性格が見えてきます。
そして、人の性格は過去の親子関係や社会的な影響も受けて形作られていきます。
特に、親やその他の重要な他者の影響を強く受けます。
ものの考え方やとらえ方も性格に含まれるか?
もちろん、こういったとらえ方や考え方、ひとえに「認知」と呼ばれるものも性格に含まれると思います。
ただし、認知や考え方、思考といったものは目に見えるかどうかでいうと、目に見えないものに分類されます。
目に見えない心の働きを可視化したものが行動であり、やはり行動を観察することによって、その背景にある心の働き、認知の癖、考え方のパターンを推測することができると言えるでしょう。
性格の構造

エゴグラムでは性格の構造をP、A、Cであらわします。
●Pは親によって影響を受けた行動を示します。
●Aは科学的な思考・行動の自我状態です。冷静さ、理性、論理性などにも関連しています。
●Cは子どもの自我状態、感情や一次的欲求の領域です。
また、PはCP(批判的親)とNP(養育的親)に、CはFC(自由な子ども)とAC(順応的な子ども)に分けられます。
これら5つの性格構造の強・弱の組み合わせによって、人の性格傾向を浮き彫りにします。
改めて、性格は変えられるものなのだろうか?
性格は変えられると思います。
また、過去の自分と比較して全く性格の変わっていない人というのもいないと思います。
上述のように、性格を「観察可能な行動」として定義するのであれば、
観察可能な行動の量や質は日々変化します。そこに加えて、量も質も意識して変えていけば、結果として観察されるその人の行動、つまり見た目に現れる性格はより明確に変わっていくはずです。
そして、他者からある日「なんだか最近変わったね」と言われるとき、言われた当人もまた自分の行動や性格の変化を実感し、より一層変化が方向づけられていくことでしょう。
一度定められた性格は簡単には変えられないようにも思えますが、
自分の性格の傾向、つまり、自分の行動の癖やパターンを十分に知ることが出来れば、
性格は努力によって(部分的には)変えることが可能です。
なぜなら定義上、性格は行動の癖の束だからです。
性格が変わることは良いことだろうか?
性格は変えることが可能であるということに私自身は疑いはもっていません。確かに、180度の変化は難しいかもしれませんが、少しは変わることができるものと思っています。それも、少し変わるぐらいならそんなに難しいことでもないとさえ思っています。
しかし、ここで新たな疑問も湧いてきます。それは
果たして性格が変わるということは良いことなのだろうか?
ということです。
私が誰かに「性格は変えられるのでしょうか?」と尋ねられた時、
<その前に、いや、それと同時に、それは果たして良いことだろうか?悪いことだろうか?それとも良いことでも悪いことでもどちらでもないことなのだろうか?>
と密かに自問するでしょう。
変えられるからと言って、変えないほうが良いことも世の中にはたくさんあるからです。
また、変わりたくても変われないこともあれば、
変わりたくなくても変わってしまうこともあります。
結局は、性格に関してあまり全力で取り組むのではなく、ある程度必然性に任せて、
「性格を変えたいと思っている自分」に向き合っていくことが大事なのだと思います。
なぜ性格を変えたいのか?
変わることが本当に良いことなのだろうか?
と。
人によって答えは異なるでしょう。
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引用・参考文献
- 新里里春(著)、水野正憲(著)、桂戴作(著)、杉田峰康(著) 『交流分析とエゴグラム Transactional Analysis SERIES 3』 チーム医療、1986年
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