環境の変化と双極性障害

コラム

環境の変化とは何を指しているのか?

特に双極性障害においては、「環境の変化」がその病態に及ぼす影響は大きいと考えられます。

ここでいう環境の変化とは、

  • 人間関係の変化
  • 職場環境の変化
  • 役割の変化
  • その他、人生の転機と言えるような出来事・イベント

・・・などが挙げられます。

双極性障害では、しばしばこれらの変化に対して敏感に反応し、振り回されやすいと言えます。

つまり、環境の変化によって、躁転(躁状態に転じること)やうつ転(うつ状態に転じること)のリスクが高まります。

環境の変化が誘因となり症状があらわれることがありますが、どんなことが誘因となりやすいかは個人差がありますので、自分がどのような誘因によって、どのような状態になりやすいのかはそれぞれの人が考えていく必要があります。

そのためには、ライフチャートを使って過去を振り返ることも有用でしょう。

人間関係の変化

躁転のきっかけが人との刺激的な関わりであるという双極性障害の患者さんは非常に多いです。

環境というと「人」をイメージしずらい方もいるでしょうが、人も立派な環境です。

関わる人によって、双極性障害の寛解の可否にも影響があると考えられます。
そのため、双極性障害に理解のある人や、うつ状態や寛解状態になっても安定して付き合うことが出来るような人と選択的に関わるようにした方が良いと思われます。

しかし、躁状態の時には、普段関わることがないような人に対しても積極的に関わって交友範囲を増やしたりするため、躁状態が終わった時に苦手な人間関係を継続するための努力を払うことが出来ずに悩みを増やしてしまう人もいるのではないでしょうか?

普段は何とも思わないような人との会話ややりとりが刺激的に感じられるようになったり、
普段は関わることの無いような人に積極的に関わりを求めようとしたりし始めるのは、
躁転の赤信号です。
そのような状態に自分で気づき、自分からリスクを避けることが出来るようになるためにも、
人の刺激の記録も含めたセルフモニタリングをする習慣を付けることをおすすめいたします。

人間関係の変化には以下のものが挙げられます

  • 進学、転職などによる新しい人との出会い
  • 知人、友人、恋人、親族との別れ

大雑把に言ってしまえば、人間関係の変化とは人との「出会い」と「別れ」のことですね。

職場環境の変化

双極性障害に限らず、精神疾患を抱える多くの人にとってどのような環境の職場で働くのかは、精神的・肉体的な健康を維持するためにとても重要な要素になってきます。

ここで言う職場環境の変化は以下のようなものが挙げられます。

  • 職場内における仕事内容の変化(例えば、現場仕事→事務仕事)
  • 転職
  • 失職(何らかの理由で職を失うこと。自己都合の退職や会社都合の解雇など)
  • 職場の人間関係の変化(上司が変わる、新しい部下が入ってくる、など)

双極性障害の人にとっても、生活に一定のリズムを作ることが重要です。

一度覚え、安定したリズムの一部となっていた仕事環境が変化することは、やはり双極性障害の人にとっては脅威となり得ます。

上述のリストの中でも、特に失職は大きな影響があると考えられます。自己都合であれ会社都合であれ、生活の一部となっていた会社がある日を境になくなるのは大きなストレスです。

「これからどうしていけばいいのか?」

「仕事はすぐに見つかるだろうか?」

「早く次の仕事を見つけないと金銭的にも生活が厳しい・・・」

など、焦りや不安から、極端な行動に発展することもあり得ます。

双極性障害と適職

ここでは詳しくは述べませんが、双極性障害の人が寛解を維持して安定して働くことの出来る職場とは何でしょうか?

一概には言えませんが、有り体に言えば「障害に理解のある職場」が第一の条件であると思います。

まずは、家族をはじめとして、カウンセラーや医師などあらゆる人と相談して、自分の適職を模索すると良いと思います。

自分のやりたいことと、適職とはまた違うものですから。

役割の変化

役割の変化は、役割が変化する以前の自分とは異なる

「ふるまい」「考え方」「生き方」を要求されることがしばしばです。

役割の変化によって生じるストレスを、周囲の人と上手く協力しながら乗り越えられる場合は更なる成長・発展に繋がりますが、
役割の変化が大きな壁となって立ちふさがり、乗り越えるのに苦労する方も当然少なくはありません。

私個人のことで恐縮ですが、
以前働いていた会社で役職が一つ上に上がるだけでも、かなりのストレスを感じました。
「期待に応えなければならない」
「部下に恥ずかしい姿をみせてはならない」
と過剰に責任感を抱きすぎて、自分で自分のクビを苦しめるような状況に陥っていたことがありました。

役割の変化には以下のようなものが挙げられます。

  • 職場での役割の変化(役職が変わるなど)
  • 家庭での役割の変化(母親になる、父親になる、など)

役割の変化によって心身の不調を訴える方は少なくありませんが、
そういった方々の多くは一言で「真面目」な人が多いと思います。

自分の役割をきちんと全うしなければならないと強く思うからこそ、ストレスも強く感じやすいでしょう。

しかし、別の見方をすれば役割の変化は新しい自分を作っていくための契機でもあります。

ピンチをチャンスに変えるという視点も持って、役割の変化に脅かされている人のお役に立ちたいものです。

その他、人生の転機と言えるような出来事・イベント

その他の考えられる変化としては以下のものが挙げられます。

  • 引っ越し
  • 結婚
  • 事故

ここで重要な視点となるのが、

一般的には「良い出来事」とされているようなことであってもストレスとなり得る

ということです。

「マリッジブルー」「産後うつ」・・・などもその一つですが、

変化は「現在の安定を壊す可能性がある」ものであり、「今までとは違った生き方を求めるものである」のです。

多くの人は安定を求めます。

現在が安定していればいるほど、その安定を崩す可能性に不安を感じるのです。

そのような不安との付き合い方、新しい自分の創造が、

これらの変化に適応出来ずに苦しんでいる人にとっての主要なテーマとなるでしょう。

最後に、「変化を恐れて、何もしてはいけないのか??」

双極性障害でお悩みの方からよくある質問の一つです。

「躁転を予防するためには、毎日、変化の少ない生活を心がけなければいけないのか?」

「自分の行動が極度に制限されているようで辛い」

とてもよく分かります。

この質問に簡単に答えるとすれば、
①〈(よほど危険な事で無い限りは)何かすることを恐れる必要も、我慢する必要もありません
②〈しかし、自分が今どのような状態になっているのかを観察し続けることは続けた方が良い〉
③〈同時に、起こり得る変化に対して何らかの準備をすることで、その変化によって受ける刺激を最小限に出来たり、あるいは、その変化そのものをなくすことが出来るのならば、そのような準備をすることに越したことはない〉
・・・と答えたいと思います。

③で言っていることは、双極性障害の人にとってしばしば「我慢」のように受け取られることもありますが、もちろんここで言いたいのは我慢の推奨ではありません。

小さな変化であれ大きな変化であれ、
何か変化が起こることが分かっている時に準備をしておくことは、
旅に出る時に荷物の整理をしたり、宿泊場所の予約をしたり、旅行費をまかなったり、旅行ルートを決めておいたりすることに似ています。
そのように準備しておくことで、旅の最中に迷ったり、危険な目に遭ったりするリスクを最小限に抑えることが出来ます。

躁状態にある人は、しばしば無謀な冒険家です。
旅行の計画等はしません。
計画や準備をしないことで、よりスリルを味わっているかのようにさえ見えます。

もし、双極性障害に悩む人が、リスクを避けるための最低限の準備をすることが出来るようになったなら、それは治療の一つの成功と言えるでしょう。

もちろん、それを自分一人で達成するのは至難ですので、カウンセラーなどに相談しながら少しずつ達成していって欲しいと思います。

「少しずつ」が大事です。

「コツコツ」が大事です。

双極性障害の人は、この「コツコツ」が苦手な人が多いです。

変化に左右されやすく、自分の状態が変化しやすいために、一つの事を継続し、長期的な物事を達成することが出来にくいのです。

そのため、
「自分は物事を達成することが出来ないんだ」
と、自尊心が低下し、劣等感に悩む人も多いと思います。

そういった方の「コツコツ」と取り組んだ、小さな達成を補助したいと思います。

いきなり大きな達成を目指すのではなく、身近な小さな達成を積み重ねることが、自信になりますから。

↓こちらの動画でも、「我慢」について話しています

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